、別に。」「何、何を……悪気はない。悪気がなくって、悪口《あっこう》を、何だ、洒落《しゃれ》だ。黙んな、黙んな。洒落は一廉《ひとかど》の人間のする事、云う事だ。そのつらで洒落なんぞ、第一読者に対して無礼だよ。べっかっこが聞いて呆れる。そのべっかっこという面を俺の前へ出して見ろ。うわさに聞けば、友子づれで、吉原の河岸をせせって。格子へ飛びつくというから、だぼ沙魚《はぜ》のようになりやがった。――弁持……」十二のくすくす笑っているのを呼びかけて、「溝《どぶ》をせせって、格子へ飛びつくのは、だぼ沙魚じゃない……お前はよく、くだらない事を知っている、何だっけな。」弁持が鹿爪らしく、「は、飛沙魚《とびはぜ》です、は。」「飛沙魚だ、贅沢《ぜいたく》だ。もぐり沙魚の孑孑《ぼうふら》だ。――先方《さき》は女だ、娘だよ。可哀そうに、(口惜《くやし》いか、)と俺が聞いたら、(恥かしい、)と云って、ほろりとしたんだ、袖で顔を隠したよ。孑孑め、女だって友だちだ、頼みある夥間《なかま》じゃないか。黒髪を腰へ捌《さば》いた、緋縅《ひおどし》の若い女が、敵の城へ一番乗で塀際へ着いた処を、孑孑が這上《はいあが》って、
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