乳の下を擽《くすぐ》って、同じ溝《どぶ》の中へ引込むんだ。」と……」
「分った、もう可《い》い、もう可い。」
と弦光は膝も浮きそうに、火鉢の向うで、肩をわななかせて、手を振った。
「雪のごとき、玉のごとき、乳の下を……串戯《じょうだん》にしろ、話にしろ、ものの譬喩《たとえ》にしろ、聞いちゃおられん。私には、今日《こんにち》、今朝《こんちょう》よりの私には――ははははは。」
寂しい笑いで、
「話はおかしいが、大心配な事が出来た。糸|的《こう》の先生、上杉さんは、その様子じゃ大分一雪女史が贔屓《ひいき》らしい。あの容色《きりょう》で、しんなりと肩で嬌態《あま》えて、机の傍《そば》よ。先生が二階の時なぞは、令夫人やや穏《おだやか》ならずというんじゃないかな。」
「串戯《じょうだん》じゃない、片田舎の面疱《にきび》だらけの心得違《こころえちがい》の教員なぞじゃあるまいし、女の弟子を。失礼だ。」
「失礼、結構、失礼で安心した。しかし、一言でそうむきになって、腰のものを振廻すなよ。だから振られるんだ、遊女《おいらん》持てのしない小道具だ。淀屋《よどや》か何か知らないが、黒の合羽張《かっぱばり》
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