月府玄蝉、弁持十二。」
「好《い》い、好い。」
「並んだ中にいつも陰気で、じめじめして病人のようだからといって、上杉先生が、おなじく渾名《あだな》して――久須利《くすり》、苦生《くせい》。」
「ああ、そう、久須利か。」
「くせえというようで悪いから、皆《みんな》で、苦生《にがせい》、苦生だよ。」
「さてまたさぞ苦《にが》る事だろう、ほうしょは折目|摺《ず》れが激しいなあ。ああ、おやおや、五つ紋の泡が浮いて、黒の流れに藍《あい》が兀《は》げて出た処は、まるで、藍瓶《あいがめ》の雪解だぜ。」
「奇絶、奇絶。――妙とお言いよ。」
「妙でないよ、また三馬か。」
「いい燗だ。そろそろ、トルストイ、ドストイフスキーが煮えて来た。」
「やけを言うなというに。そのから元気を見るにつけても、年下の息子を悩ませ、且つその友達を苦らせる、(一張羅だと聞けばかなしも。)我ながら情《なさけ》ない寂しい声だな。――懺悔《ざんげ》をするがね。茶屋で、「お傘を。」と言ったろう。――「お傘を」――家来どもが居並んだ処だと、この言《ことば》は殿様に通ずるんだ、それ、麻裃《あさがみしも》か、黒羽二重《くろはぶたえ》お袴《は
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