って酒は呑める。
二人とも冷酒《ひや》で呷《あお》った。
やがて、小形の長火鉢で、燗《かん》もつき、鍋も掛《かか》ったのである。
「あれはね、いいかい、這般《しゃはん》の瑣事《さじ》はだ、雪折笹にむら雀という処を仕方でやったばかりなんだ。――除《わり》の二の段、方程式のほんの初歩さ。人の見ている前の所作なんぞ。――望む処は、ひけ過ぎの情夫《まぶ》の三角術、三蒲団の微分積分を見せたかった……といううちにも、何しろ昨夜《ゆうべ》は出来が悪いのさ。本来なら今朝の雪では、遊女《おんな》も化粧を朝直しと来て、青柳か湯豆府とあろう処を、大戸を潜《くぐ》って、迎《むかえ》も待たず、……それ、女中が来ると、祝儀が危い……。一目散に茶屋まで仲之町を切って駆けこんだろう。お同伴《つれ》は、と申すと、外套なし。」
「そいつは打殺《ぶちころ》したのを知ってる癖に。」
「萌《きざ》した悪心の割前の軍用金、分っているよ、分っている……いるだけに、五つ紋の雪びたしは一層あわれだ、しかも借りものだと言ったっけかな。」
「春着に辛うじて算段した、苦生《にがせい》の一張羅さ。」
「苦生?……」
「知ってるじゃないか、
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