皿に、葱《ねぎ》と菎蒻《こんにゃく》ばかりが、堆《うずたか》く、狩野派末法の山水を見せると、傍《かたわら》に竹の皮の突張《つッぱ》った、牛の並肉の朱《あか》く溢出《はみで》た処は、未来派尖鋭の動物を思わせる。

       二十二

「仰せにゃ及ぶべき。そうよ、誰も矢野がふられたとは言やしない。今朝――先刻《さっき》のあの形は何だい。この人、帰したくない、とか云って遊女《おんな》が、その帯で引張《ひっぱ》るか、階子段《はしごだん》の下り口で、遁《に》げる、引く、くるくる廻って、ぐいと胸で抱合った機掛《きっかけ》に、頬辺《ほっぺた》を押着《おッつ》けて、大きな結綿《ゆいわた》の紫が垂れ掛《かか》っているじゃないか。その顔で二人で私を見て、ニヤニヤはどうしたんだ、こっちは一人だぜ。」
「そうずけずけとのたまうな、はははは談じたまうなよ、息子は何でも内輪がいい。……まずお酌だ。」
 いかがな首尾だか、あのくらい雪にのめされながら、割合に元気なのは、帰宅早々婆さんを使いに、角店の四方《よも》から一升徳利を通帳《かよい》という不思議な通力で取寄せたからで。……これさえあれば、むかしも今も、狸だ
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