池の端へ出て、揚出しわきの、あの、どんどんの橋を渡って、正面に傘を突翳《つきさ》して来たんでしょう。ぶつかりそうに、後縋《うしろすが》りに、あの二人に。
 おや……帽子はすっぽりでも、顔は分りましたから、ちょっと挨拶はしましたけれど、御堂《みどう》の方へ心はせきます。それにお連れがまるで知らない人ですから、それなり黙ってさ。それだって、様子を見ただけでも、お久しぶりとも、第一、お早う、とも言えた義理じゃありませんわ。」
「どうしたんでしょう、こんな朝……雪見とでもいうのかしら。」
「あなたもあんまりお嬢さんね。――吉原の事を随筆になすったじゃありませんか。」
「いやです、きまりの悪いこと。……親類に連れられて、浅草から燈籠《とうろう》を見に行っただけなんです、玉菊の、あの燈籠のいわれは可哀《あわれ》ですわね。」
「その燈籠は美しく可哀だし、あの落武者……極《きま》っていますよ、吉原がえりの落武者は、みじめにあわれだこと。あの情《なさけ》ない様子ったら。おや、立停りましたよ、また――それ、こっちを見ています。挨拶――およしなさい、連《つれ》がありますから。どんなことを言出そうも知れません
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