りの板額《はんがく》ですね。」
渚が傘を取直して、
「武器《えもの》は、薙刀《なぎなた》。」
「私は、懐剣。」
二人が、莞爾《にっこり》。
お京の方が先んじて、ギイと押すと、木戸が向うへ、一歩先陣、蹴出す緋鹿子、揺《ゆるぎ》の糸が、弱腰をしめて雪を開いた。
「おお、まあ、天晴《あっぱ》れ。」
「と、おっしゃって下すった処で、敵手《あいて》はお汁粉よ。」
「あなたは。」
「え、私は、塩餡《しおあん》。」
「ご尋常……てまえは、いなか。」
「あとで、鴨雑煮《かもぞうに》。」
「驕《おご》る平家ね、揚羽の蝶のように、まだ釣荵《つりしのぶ》がかかっていますわ。」
と閉った縁の廂《ひさし》を見つつ、急に渚が肩をよじた。
「ああ、冷い、柳の枝が背《うしろ》から。」
肩を払うと、顔へかかるのを、片手でまた掻《か》き遣って、頬をすぼめた。
「雫《しずく》もしないのに濡れたんですか、冷いこと。」
お京も立停《たちど》まって振向いた。
「髪の毛ですわ……あら、私ンじゃない。」
しごいて、引いて、幾重にも巻取るようにした指を、離すと、すっと解けて頬を離れる。成程、渚のではない。その渚が――女だ
前へ
次へ
全151ページ中61ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング