、髪にはどこまでも目が繊細《こまか》い――雪を透かして、
「まあ、長い、黒い、美しい……どこまでも雪の上を。――月村さん、あなたのですよ。」
「いいえ、私。」
「良《い》い薫もするようです。どこかに梅かしら。それ、そうですとも。……頭巾をこぼれて、黒く一筋。」
「すこしは長いといいますけれど、薄いほどだって言われますもの。」
 と頭巾を解き、颯《さっ》と顕《あら》われた島田の銀の丈長《たけなが》が指尖《ゆびさき》とともに揺れると、思わず傘を落した。
「気味の悪い。」
 降りしきったのが小留《おやみ》をした、春の雪だから、それほどの気色でも、霽《は》れると迅《はや》い。西空の根津一帯、藍染《あいそめ》川の上あたり、一筋の藍を引いた。池の水はまだ暗い。
「気味の悪い?……気味の悪い事があるもんですか。手で引いてごらんなさいよ、ね、それ、触るでしょう、耳の下、ちっと横、手繰って。……そう、そう、すらすらと動きますわ、木戸の外の柳の上まで、まあ。」
「私どうしましょう。」
「結構じゃありませんか、あなたの指から、ああ鬢《びん》の中へ。」
 と、相傘するまで、つと寄添う。
「私どうしましょう。」
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