に受けて、りんなど打っていられはしないか。この秋の取ッつきに、雷雨おびただしかりし中に、ピシャン、と物凄く響いたのを、昼寝の目を柔かに孫を視て、「軒近に桶屋が来ているかの、竹の箍《たが》が弾《はじ》いたようじゃ。」と、またうとうとと寝《ねむ》ったほど、仏になってござるから、お京が今し帰った時の俥の音など、沙汰なしで、ご存じないが。
「祖母《おばあ》さん……」
 なき父、なき母。
「私は決してお京さんに。……ただただ、青大将の女房にはしたくないんです。」
 と、きちんと両手をついたかと思えば、すぐに引※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]《ひきむし》りそうな手を、そのまま宙に振って、また飛上って、河童《かっぱ》に被《かぶ》った杯をたたいた。
「でんでん虫、虫。雨も風も吹かンのんに、でんでん虫、虫……」
 と、狂言舞に、無性|矢鱈《やたら》に刎歩行《はねある》く。
 のそのそ、のそのそ、一面の南瓜の蔭から這出《はいだ》したものは蝦蟇《がま》である。とにかく、地借《ちがり》の輩《やから》だし、妻なしが、友だち附合の義理もあり、かたがた、埴生《はにゅう》の小屋の貧旦那《ひんだんな》が、
前へ 次へ
全151ページ中147ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング