んぼり》と立った、が屹《きっ》と胸を緊《し》めた。その姿に似ず、ゆるく、色めかしく、柔かな、背負《しょい》あげの紗綾形絞《さやがたしぼ》りの淡紅色《ときいろ》が、ものの打解けたようで可懐《なつか》しい。
框《かまち》の障子を、膝をついて開けると、板に置いた、つつみものを手に引きつけて、居直る時、心|急《せ》いた状《さま》に前褄が浅く揺れて、帯の模様の緋葉《もみじ》が散った。
「お恥しいもんです。小さな盃は、内に久しくありました。それに、お酒をお一口。」
四十
「…………」
「私……しばらくお別れに来たんです。」
「……旅行――遠方へ。」
「いいえ。」
糸七は釈然として、胸で解けた。
「ああ、極りましたか、矢野とお約束。」
眉が一文字に、屹《きっ》と視《み》て、
「あの方、お断りしてしまいました、他所《よそ》へ嫁に参ります。」
「他所へ。……おきき申すのも変ですが。」
お京は引結んだ口元をやっと解いたように見えて、
「野土青麟の許《とこ》へです。」
糸七は聞くより思わず戦《わなな》いた。あの青大将が、横笛を、臭《いき》を浴びても頬が腐る、黒い舌に――この帯を、
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