様。」
二声目に、やっと聞えて、
「はい、はい。」
「辻町さんに……」
「…………」
「糸七さんに……」
肩身を狭く、ちょっと留めて、
「そんな事いったって、分りませんよ。」
「……お孫さんに。……」
「はい。」
「いろいろとお世話になります。」
「……孫めは幸福《しあわせ》、お綺麗なお客様で、ばばが目にも枯樹に花じゃ。ほんにこの孫《こ》の母親、わしには嫁ごじゃ。江戸から持ってござっての、大事にさしゃった錦絵にそのままじゃ。後の節句にも、お雛様《ひなさま》に進ぜさした、振出しの、有平《あるへい》、金米糖でさえ、その可愛らしいお口よごしじゃろうに、山家《やまが》在所の椎《しい》の実一つ、こんなもの。」
と、へぎ盆も有合さず、菜漬づかいの、小皿をそこへ、二人分。糸七は俯向《うつむ》いた。一雪《きみ》よ、聞け。山果庭ニ落チテ、朝三《チョウサン》ノ食|秋風《シュウフウ》ニ※[#「厭/(餮−殄)」、第4水準2−92−73]《ア》クとは申せども、この椎の実とやがて栗は、その椎の木も、栗の木も、背戸の奥深く真暗《まっくら》な大藪《おおやぶ》の多数の蛇《くちなわ》と、南瓜畑の夥多《おびただ》しい
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