なたも、こんな、私のようなものの処へおいで下すった因果に、何事も忘れてお聞き下さい。
その蚤だか虱だかを捻る片手間に、部屋から下ったという蕎麦の残り、伸びて、蚯蚓《みみず》のようにのたくるのを撮《つま》んじゃ食い、撮んじゃ食う。そこをまた、牙と舌を剥出《むきだ》して、犬ですね、狆《ちん》か面《つら》の長い洋犬などならまだしも、尻尾を捲上《まきあ》げて、耳の押立《おった》った、痩せて赤剥《あかはげ》だらけなのが喘《あえ》ぎながら掻食《かっくら》う、と云っただけでも浅ましさが――ああ、そうだ。」
糸七は煙管を落した。
「あなたの吉原の随筆は、たしか、題は『あさましきもの。』でしたね。私が飛んだ『べッかッこ』をした。」
「もう、どうぞ。」
お京は膝に袖を千鳥に掛けたまま、雌浪《めなみ》を柔《やわらか》に肩に打たせた。
「大目玉を頂きましたよ、先生に。」
「もうどうぞ、ご堪忍。」
「いや、お詫びは私こそ、いわばやっぱりあなたの罰です。その「浅ましい」一つの穴で……部屋は真暗《まっくら》、がたがた廊下の曲角に、洋鉄《ブリキ》の洋燈《ランプ》一つ。余り情《なさけ》ない、「あかりが欲《ほし》い
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