った。その立つ灰にも、留南木《とめぎ》の香が芬《ぷん》と薫る。
 覚えず、恍惚《うっとり》する、鼻の尖《さき》へ、炎が立って、自分で摺《す》った燐寸《マッチ》にぎょっとした。が、しゃにむに一服まず吸って、はじめて、一息|吻《ほつ》とした。
「月村さん、あなたを見て、花嫁、いや、待って下さい。言うのも憚《はばか》りますが、その花嫁のわけなんです。――実は、今更何とも面目次第もありません、跣足《はだし》で庭へ遁《に》げましたのも、盟《ちか》って言います。あなたのお姿を見てからではないのです。……
 ……聞いたばかり、聞いたばかりで腰も抜かさないのは、まだしもの僥倖《しあわせ》で飛出したんです。今しがた、あなたが、大方、この長屋の総木戸をお入んなすった時でしょう。その頃です、唯今のお茶っぴいが、その窓から頭を出して、「花嫁が来た。」と言ったんです。――来たらば知らしておくれよ、と不断、お茶っぴいを斥候《ものみ》同然だったものですから、聞くか聞かないに、何とも、不状《ぶざま》を演じました。……いま、そのわけを話しますが。……
 ……煙草は……それはありがたい、お嫌《きらい》でも、お友だちがいに
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