おしまいなさいますし、私、死にたくなりました。」
と、片袖で顔をかくすと、姿も、消入る風情である。
「それが、それがです、それにわけがあるんです。何しろ、あなたを見てからではありません、見ない前に飛出したんです、――今申訳をします。待って下さい。どうも、何しろ、周囲《まわり》が煩《うるさ》い。」
軸物《かけもの》も、何もない、がらん堂の一つ道具に、机わきの柱にかけた、真田が短銃《たんづつ》の両提《ふたつさげ》。
鉄の煙管《きせる》はいつも座右に、いまも持って、巻莨《まきたばこ》の空缶《あきかん》の粉煙草を捻《ひね》りながら、余りの事に、まだ喫《の》む隙《すき》を見出さなかった、その煙管を片手に急いで立って、机の前の肱掛窓《ひじかけまど》の障子を開けると、植木屋の竹垣つづきで、細い処を、葎《むぐら》くぐりに人は通う。
「――夜叉|的《こう》、夜叉|的《こう》。」
声の下に、鼻の上まで窓の外へ、二ツ目が出た。
「光邦様、何。」
ひやりと、また汗になりながら、
「媽々《かかあ》連を追払《おっぱら》ってくれ、消してくれよ、妖術、魔術で。」
黙って瞬《まばたき》でうなずいた目が消える
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