をした。あまつさえ、光邦様。……
五目の師匠も近所なり、近い頃氷川様の祭礼《おまつり》に、踊屋台の、まさかどに、附きっきりで居てから以来、自から任じて、滝夜叉《たきやしゃ》だから扱いにくい。
「チチーン、シャン、チチチ、チチチン。(鼓の口真似)ポン、ポン、大宅《おおや》の太郎は目をさまし……ぼんやりしないでさ。」
「馬鹿、雑巾がないじゃないか。」
「まあ、この私とした事が、ほんにそうでござんした、おほほ。」
ちゃッちゃッ、と笑いながら、お滝が木戸をポイと出る。糸七の気早く足へ掛けたバケツの水は、南瓜にしぶいて、ばちゃばちゃ鳴るのに、障子一重、そこのお京は、気息《けはい》もしない。はじめからの様子も変だし、消えたのではないか、と足首から背筋が冷い。
衣《きぬ》の薫が、ほんのりと、お京がすッとそこへ出た。
三十六
慌てて、
「唯今《ただいま》、御挨拶。」
これには、ただ身の動作《こなし》で、返事して、
「おつかいなさいましな。」
と、すぐに糸七が腰かけた縁端《えんばな》へ、袖摺れに、色香折敷く屈《かが》み腰で、手に水色の半※[#「巾+白」、第4水準2−8−83
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