し、散らかし放題だが、まだその方へ入ってくれればよかったものをと、さながら遁出《にげ》したあとの城を、乗取《のっと》られたようなありさまで。――とにかく、来客――跣足《はだし》のまま、素袷《すあわせ》のくたびれた裾を悄々《しおしお》として、縁側へ――下まで蔓《はびこ》る南瓜の蔓で、引拭《ひきぬぐ》うても済もうけれど、淑女の客に、そうはなるまい。台所へ廻ろうか、足を拭《ふ》いてと、そこに居る娘《ひと》の、呼吸《いき》の気勢《けはい》を、伺い伺い、縁端《えんばな》へ。――がらり、がちゃがちゃがちゃん。吃驚《びっくり》した。
耳元近い裏木戸が開くのと、バケツを打《ぶ》ッつけたのが一時《いっとき》で、
「やーい、けいせい買のふられ男の、意気地なしの弱虫や、花嫁さんが来たって遁げたや、ちゃッ、ちゃッ、ちゃッ。」
……と、みそさざいのように笑ったのは、お滝といって、十一二、前髪を振下げた、舞みだれの蝶々|髷《まげ》。色も白く、子柄もいいが、氏より育ちで長屋中のお茶ッぴい。
「足をお洗いよ、さあ、ぼんやりしないで、よ、光邦《みつくに》様。」
けいせい買の、ふられ男の弱虫は、障子が開くと、冷汗
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