の前の大川の浪に皆流れた。成程、夕顔の浴衣を着た、白い顔の眉の上を、すぐに、すらすらと帆が通る……と見ただけでも、他事《よそ》ながら、簇《しんし》、荷高似内のする事に、挙動《ふるまい》の似たのが、気|咎《とが》めして、浅間しく恥しく、我身を馬鹿と罵《ののし》って、何も知らないお京の待遇《もてなし》を水にした。アイスクリームか、ぶっかきか、よくも見ないで、すたすた、どかどか、がらん、うしろを見られる極りの悪さに、とッつき玄関の植込の敷石に蹴躓《けつまず》いて、ひょろ、ひょろ。……
「何のざまだ。」
 心の裡《うち》で呟《つぶや》いた……
[#ここから4字下げ]
糸七は蟇と踞み。
南瓜の葉蔭に……
[#ここで字下げ終わり]

       三十五

[#ここから4字下げ]
尾花を透かして、
蜻蛉の目で。
[#ここで字下げ終わり]
 内へ帰れば借金取、そこら一面八方|塞《ふさが》り、不義理だらけで、友達も好《い》い顔せず、渡って行《ゆ》きたい洲崎へも首尾成らず……と新大橋の真中《まんなか》に、ひょろ、ひょろのままで欄干に縋《すが》って立つと、魂が中ぶらり、心得違いの気の入れどころが顛倒《ひっ
前へ 次へ
全151ページ中121ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング