くりかえ》っていたのであるから、手玉に取って、月村に空へ投出されたように思った。一雪め、小説なぞ書かなければ、雑誌編輯の用だと云って、こんな使いはしまいものを、お京め。と、隅田の川波、渺々《びょうびょう》たるに、網の大きく水脚を引いたような、斜向うの岸に、月村のそれらしい、青簾《あおすだれ》のかかった、中二階――隣に桟橋を張出した料理店か待合の庭の植込が深いから、西日を除けて日蔭の早い、その窓下の石垣を蔽《おお》うて、もう夕顔がほの白い……
……時であった。簾が巻き消えに、上へ揚ると、その雪白の花が、一羽、翡翠《ひすい》を銜《くわ》えた。いや、お京の口元に含んだ浅黄の団扇が一枚。大潮を真南《まんみなみ》に上げ颯《さっ》と吹く風とともに、その団扇がハッと落ちて、宙に涼しい昼の月影のようにひらひらと飜《ひるがえ》ると見るうちに、水面へスッと流れて、水よりも青くすらすらと橋へ寄った。その時|悚然《ぞっ》として、目を閉《ふさ》いで俯向《うつむ》いた――挨拶《おじぎ》をしたかも知れない。――
さて何と思ったろう……その晩だったか、あと二三日おいてだったか、東雲《しののめ》の朝帰りに、思わず聞
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