っぱしょり》、下駄をつまんだ素跣足《すはだし》が、茗荷谷《みょうがだに》を真黒《まっくろ》に、切支丹坂《きりしたんざか》下から第六天をまっしぐら。中の橋へ出て、牛込へ潜込《もぐりこ》んだ、が、ああ、後《おく》れた。料理屋の玄関へ俥が並んで、※[#「車+隣のつくり」、第3水準1−92−48]々《からから》と、一番の幌《ほろ》の中から、「遅いじゃないか。」先生の声にひやりとすると、その後から、「待っていたんですよ。」という声は、令夫人。こんな処へ御同行は、見た事、聞いた事もない、と呆れた、がまた吃驚《びっくり》。三つ目の俥の楫棒《かじぼう》を上げた、幌に覗かれた島田の白い顔が……
……あの、お京……いやに、ひったり俯向《うつむ》いた……
幌の中で、どしばたして、弦光が、「辻町か、引返《ひっかえ》して飲もう」という時、先生の俥がちょっとあと戻りして、「矢野は酔ってる、もう帰んな。……塾のものには誰にも黙っているんだぜ。」――馬鹿にも分った、これは、見合だ。
納ったか、悦に入ったか、気取ったか、弦光め、それきり多日《しばらく》顔を見せに来ない。酒でも催促するようで癪だからこっちからは出向
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