から、糸七の背戸のようになっている。
(――そこへ遁《に》げた――)
糸七は、南瓜の葉を被《かぶ》らんばかり、驚破《すわ》といえば躍越えて遁げるつもりの植木屋の竹垣について、薄《すすき》の根にかくれて、蝦蟇《がま》のように跼《しゃが》んで、遁げた抜けがらの巣を――窺《うかが》えば――
――籠《こも》るのは、故郷から出て来て寄食している、糸七の甥の少年で、小説家の巣に居ながら、心掛は違う、見上げたものの大学志願で、試験準備に、神田|辺《あたり》の学校へ通って、折からちょうど居なかった。
七十八歳になるただ一人、祖母ばかり。大塚の場末の――俥《くるま》がその辻まで来ると、もう郡部だといって必ず賃銀の増加《まし》を強請《ねだ》る――馬方の通る町筋を、奥へ引込《ひっこ》んだ格子戸わきの、三畳の小部屋で。……ああ、他事《ひとごと》ながらいたわしくて、記すのに筆がふるえる、遥々《はるばる》と故郷《おくに》から引取られて出て来なすっても、不心得な小説孫が、式《かた》のごとき体装《ていたらく》であるから、汽車の中で睡《ねむ》るにもその上へ白髪《しらが》の額を押当てて頂いた、勿体ない、鼠穴のある古
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