だ。ただし、呼出されようが、出されまいが、喰わそうが喰わすまいが、一雪の勝手だから、そんな事は構っちゃいられん。……不首尾重って途絶えているけれど、中洲より洲崎《すさき》の遊女《おんな》が大切なんだ。しかし、心配は要るまいと思う。荷高の偵察によれば――不思議な日、不思議な場合、得《え》も知れない悪臭い汚い点滴《したたり》が頬を汚して、一雪が、お伽堂へ駆込んだ時、あとで中洲の背後《うしろ》へ覆被《おいかぶ》さった三人の中《うち》にも、青麟の黒い舌の臭気が頬にかかった臭さと同じだ、というのを、荷高が、またお時から、又聞《またぎき》、孫引に聞いている。お時でさえ黄水を吐く。一雪は舐《な》められると血を吐くだろう、話にはなりゃしないよ。」
弦光は案じ入って、立処《たちどころ》に年を取ること十《とお》ばかり。
「いやいや、そうでない。すべて悲劇はそこらで起る。不思議に、そんな縁の――万々一あるまいが――結ばる事が、事実としてありかねない。予感が良くない。胸が騒ぐ。……糸ちゃん、すぐにもお伽堂とかへ行って。」
「そいつは、そいつは不可《いけな》い……」
「なぜだよ、どうもお伽堂というのは、糸|的
前へ
次へ
全151ページ中106ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング