、いま腰を掛けたのは柳の茶屋と言ふのであつた。が、紅《あか》い襷《たすき》で、色白《いろじろ》な娘が運んだ、煎茶《せんちゃ》と煙草盆《たばこぼん》を袖《そで》に控へて、然《さ》まで嗜《たしな》むともない、其の、伊達《だて》に持つた煙草入《たばこいれ》を手にした時、――
「……あれは女の児《こ》だつたか知ら、其とも男の児だつたらうかね。」
――と思ひ出したのは其である。――
で、華奢造《きゃしゃづく》りの黄金煙管《きんぎせる》で、余り馴《な》れない、些《ち》と覚束《おぼつか》ない手つきして、青磁色《せいじいろ》の手つきの瀬戸火鉢《せとひばち》を探りながら、
「……帽子を……被《かぶ》つて居たとすれば、男の児だらうが、青い鉢巻《はちまき》だつけ。……麦藁《むぎわら》に巻いた切《きれ》だつたらうか、其ともリボンか知ら。色は判然《はっきり》覚えて居るけど、……お待ちよ、――と恁《こ》うだから。……」
取つて着けたやうな喫《の》み方だから、見ると、もの/\しいまでに、打傾《うちかたむ》いて一口《ひとくち》吸つて、
「……年紀《とし》は、然《そ》うさね、七歳《ななつ》か六歳《むっつ》ぐらゐな
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