、色の白い上品な、……男の児にしては些《ち》と綺麗《きれい》過ぎるから女の児――だとリボンだね。――青いリボン。……幼稚《ちいさ》くたつて緋《ひ》と限りもしないわね。では、矢張《やっぱ》り女の児か知ら。それにしては麦藁帽子……尤《もっと》もおさげに結《ゆ》つてれば……だけど、其処《そこ》までは気が付かない。……」
大通りは一筋《ひとすじ》だが、道に迷ふのも一興で、其処《そこ》ともなく、裏小路《うらこうじ》へ紛れ込んで、低い土塀《どべい》から瓜《うり》、茄子《なす》の畠《はたけ》の覗《のぞ》かれる、荒《あ》れ寂《さび》れた邸町《やしきまち》を一人で通つて、まるつ切《きり》人に行合《ゆきあ》はず。白熱した日盛《ひざかり》に、よくも羽が焦げないと思ふ、白い蝶々《ちょうちょう》の、不意にスツと来て、飜々《ひらひら》と擦違《すれちが》ふのを、吃驚《びっくり》した顔をして見送つて、そして莞爾《にっこり》……したり……然《そ》うした時は象牙骨《ぞうげぼね》の扇で一寸《ちょっと》招いて見たり。……土塀の崩屋根《くずれやね》を仰いで血のやうな百日紅《さるすべり》の咲満《さきみ》ちた枝を、涼傘《ひがさ》
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