伯爵の釵
泉鏡花

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)此《こ》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|剤《ざい》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)すら/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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        一

 此《こ》のもの語《がたり》の起つた土地は、清きと、美しきと、二筋《ふたすじ》の大川《おおかわ》、市《し》の両端を流れ、真中央《まんなか》に城の天守《てんしゅ》尚《な》ほ高く聳《そび》え、森黒く、濠《ほり》蒼《あお》く、国境の山岳は重畳《ちょうじょう》として、湖を包み、海に沿ひ、橋と、坂と、辻の柳、甍《いらか》の浪《なみ》の町を抱《いだ》いた、北陸の都である。
 一年《ひととせ》、激しい旱魃《かんばつ》のあつた真夏の事。
 ……と言ふと忽《たちま》ち、天に可恐《おそろ》しき入道雲《にゅうどうぐも》
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