、酌をしようとして、銅壺《どうこ》から抜きかけた銚子《ちょうし》の手を留め、お千さんが、
「どうしたの。」
「おほほ、や、お尋ねでは恐入るが、あはは、テ、えッ。えへ、えへへ、う、う、ちえッ、堪《たま》らない。あッはッはッはッ。」
「魔が魅《さ》したようだ。」
甘谷が呆《あき》れて呟《つぶや》く、……と寂然《しん》となる。
寂寞《しん》となると、笑《わらい》ばかりが、
「ちゃはははは、う、はは、うふ、へへ、ははは、えへへへへ、えッへ、へへ、あははは、うは、うは、うはは。どッこい、ええ、チ、ちゃはは、エ、はははは、ははははは、うッ、うッ、えへッへッへッ。」
と横のめりに平四郎、煙管の雁首《がんくび》で脾腹《ひばら》を突《つつ》いて、身悶《みもだ》えして、
「くッ、苦しい……うッ、うッ、うッふふふ、チ、うッ、うううう苦しい。ああ、切ない、あはははは、あはッはッはッ、おお、コ、こいつは、あはは、ちゃはは、テ、チ、たッたッ堪らん。ははは。」
と込上げ揉立《もみた》て、真赤《まっか》になった、七|顛《てん》八|倒《とう》の息継《いきつぎ》に、つぎ冷《ざま》しの茶を取って、がぶりと遣ると、
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