売色鴨南蛮
泉鏡花
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)緋縮緬《ひぢりめん》であった
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)停車|場《じょう》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》った顔は
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一
はじめ、目に着いたのは――ちと申兼ねるが、――とにかく、緋縮緬《ひぢりめん》であった。その燃立つようなのに、朱で処々《ところどころ》ぼかしの入った長襦袢《ながじゅばん》で。女は裙《すそ》を端折《はしょ》っていたのではない。褄《つま》を高々と掲げて、膝で挟んだあたりから、紅《くれない》がしっとり垂れて、白い足くびを絡《まと》ったが、どうやら濡しょびれた不気味さに、そうして引上げたものらしい。素足に染まって、その紅《あか》いのが映りそうなのに、藤色の緒の重い厚ぼったい駒下駄《こまげた》、泥まみれなのを、弱々と内輪に揃えて、股《また》を一つ捩《よじ》った姿で、降《ふり》しきる雨の待
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