ただ》ならず、とひしめく処に、搗《か》てて加えて易からぬは、世話人の一人が見附けた――屋台が道頓堀を越す頃から、橋へかけて、列の中に、たらたら、たらたらと一雫《ひとしずく》ずつ、血が落ちていると云うのである。
二十九
一人多い、その姫の影は朧《おぼろ》でも、血のしたたりは現に見て、誰が目にも正《まさ》しく留った。
灯の影に地を探って、穏《おだやか》ならず、うそうそ捜《さがし》ものをして歩行《ある》くのは、その血のあとを辿《たど》るのであろう。
消防夫《しごとし》にも、駕籠屋にも、あえて怪我をしたらしいのはない。婦《おんな》たちにも様子は見えぬ。もっとも、南地第一の大事な市の列に立てば、些細《ささい》な疵《きず》なら、弱い舞妓も我慢して秘《かく》して退《の》けよう。
が、市に取っては、上もなき可忌《いまわ》しさで。
世話人は皆激しく顰《ひそ》んだ。
知らずや人々。お珊は既に、襟に秘《かく》し持った縫針で、裏を透《とお》して、左の手首の動脈を刺し貫いていたのである。
ただ、初《はじめ》から不思議な血のあとを拾って、列を縫って検《しら》べて行《ゆ》くと、静々《
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