の堤を築いて、両方へ押分けたれば、練もののみが静まり返って、人形のように美しく且つ凄《すご》い。
 ただその中を、福草履ひたひたと地を刻んで、袴《はかま》の裾を忙《せわ》しそう。二人三人、世話人が、列の柵|摺《ず》れに往《ゆ》きつ還《かえ》りつ、時々顔を合わせて、二人|囁《ささや》く、直ぐに別れてまた一人、別な世話人とちょっと出遇《であ》う。中に一人落しものをしたように、うろうろと、市女たちの足許《あしもと》を覗《のぞ》いて歩行《ある》くものもあって、大《おおき》な蟻の働振《はたらきぶり》、さも事ありげに見えるばかりか、傘さしかけた白丁どもも、三人ならず、五人ならず、眉を顰《ひそ》め口を開けて空を見た。
 その空は、暗く濁って、ところどころ朱の色を交えて曇った。中を一条《ひとすじ》、列を切って、どこからともなく白気《はっき》が渡って、細々と長く、遥《はるか》に城ある方《かた》に靡《なび》く。これを、あたりの湯屋の煙、また、遠い煙筒《えんとつ》の煙が、風の死したる大阪の空を、あらん限り縫うとも言った。
 宵には風があった。それは冷たかったけれども、小春凪《こはるなぎ》の日の余残《なごり》
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