《ねや》へ送ると、前のが、屏風の片端から、烏帽子のなりで、するりと抜ける。
 下髪《さげがみ》であとを追って、手を取って、枕頭《まくらもと》から送込むと、そこに据えたのが、すっと立って、裾から屏風を抜けて出る。トすぐに続いて、縋《すが》って抱くばかりにして、送込むと、おさえておいたのが、はらはら出る。
 素袍《すおう》、狩衣、唐衣、綾《あや》と錦の影を交えて、風ある状《さま》に、裾袂、追いつ追われつ、ひらひらと立舞う風情に閨を繞《めぐ》った。巫山《ふざん》の雲に桟《かけはし》懸《かか》れば、名もなき恋の淵《ふち》あらむ。左、橘《たちばな》、右、桜、衣《きぬ》の模様の色香を浮かして、水は巴《ともえ》に渦を巻く。
「おほほほほ、」
 呼吸《いき》も絶ゆげな、なえたような美津の背《せな》を、屏風の外で抱えた時、お珊は、その花やかな笑《わらい》を聞かしたのである。
 好《よ》き機会《しお》とや思いけん。
 廊下に跫音《あしおと》、ばたばたと早く刻んで、羽織袴の、宝の市の世話人一人、真先《まっさき》に、すっすっすっと来る、当浪屋の女房《かみ》さん、仲居まじりに、奴が続いて、迎いの人数《にんず》。
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