口々に、
「御寮人様。」
「お珊様。」
「女紅場では、屋台の組も乗込みました。」
「貴女ばかりを待兼ねてござります。」
 襖の中から、
「車は?」
 と静《しずか》に云う。
「綱も申し着けました、」と世話人が答えたのである。
「待たせはせぬえ、大事な処へ、何や!」
 と声が凜《りん》とした。
 黙って、すたすた、一同は廊下を引く。
 とばかりあって、襖をあけた時、今度は美津が閨に隠れて、枕も、袖も見えなんだ。
 多一が屏風の外に居て、床の柱の、釣籠《つりかご》の、白玉椿《しらたまつばき》の葉の艶より、ぼんやりとした素袍で立った。
 襖がくれの半身で、廊下の後前《あとさき》を熟《じっ》と視《み》て、人の影もなかった途端に、振返ると、引寄せた。お珊の腕《かいな》が頸《うなじ》にかかると、倒れるように、ハタと膝を支《つ》いた、多一の唇に、俯向《うつむ》きざまに、衝《つ》と。――
 丸官の座敷を、表に視《なが》めて、左右に開いたに立寄りもせず、階子段《はしごだん》を颯《さっ》と下りる、とたちまち門《かど》へ姿が出た。
 軒を離れて、俥《くるま》に乗る時、欄干に立った、丸官、と顔を上下《うえ
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