手を引けば、内懐《うちぶところ》の乳《ち》のあたり、浪打つように膨らみたり。
「婦《おんな》の急所で圧《おさ》えておく。……乳|銜《くわ》えられて、私が死のうと、盞の影も覗《のぞ》かせぬ。さ、美津さん、まず、お前に。」
 お珊は長柄をちょうと取る。
 美津は盞を震えて受けた。
 手の震えで滴々《たらたら》と露散《たまち》るごとき酒の雫《しずく》、蛇《くちなわ》の色ならずや、酌参るお珊の手を掛けて燈《ともしび》の影ながら、青白き艶《つや》が映ったのである。
 はたはたとお珊が手を拍《たた》くと、かねて心得さしてあったろう。廊下の障子の開く音して、すらすらと足袋摺《たびずれ》に、一間を過ぎて、また静《しずか》にこの襖《ふすま》を開けて、
「お召し、」
 とそこへ手を支《つ》いた、裾《すそ》模様の振袖は、島田の丈長《たけなが》、舞妓《まいこ》にあらず、家《うち》から斉眉《かしず》いて来ている奴《やっこ》であった。
「可《よ》いかい。」
「はい。」と言いさま、はらはらと小走りに、もとの廊下へ一度出て、その中庭を角にした、向うの襖をすらりと開けると、閨《ねや》紅《くれない》に、翠《みどり》の夜具
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