儀ある座を正して、
「お盞《さかずき》。」
 で、長柄の銚子《ちょうし》に手を添えた。
 朱塗の蒔絵《まきえ》の三組《みつぐみ》は、浪に夕日の影を重ねて、蓬莱《ほうらい》の島の松の葉越に、いかにせし、鶴は狩衣の袖をすくめて、その盞を取ろうとせぬ。
「さ、お受けや。」
 と、お珊が二度ばかり勧めたけれども、騒立《さわぎた》つらしい胸の響きに、烏帽子の総《ふさ》の揺るるのみ。美津は遣瀬《やるせ》なげに手を控える。
 ト熟《じっ》と視《み》て、
「おお、まだ年の行《ゆ》かぬ、嬰児《ねね》はんや。多一はんと、酒事《ささごと》しやはった覚えがないな。貴女《あんた》盞を先へ取るのを遠慮やないか。三々九度は、嫁はんが初手に受けるが法やけれど、別に儀式だった祝言やないよって、どうなと構わん。
 そやったら多一さん、貴方《あんた》先へお受けやす。」
「はい、」と斉《ひと》しく逡巡《しりごみ》する。
「どうしやはったえ。」
「御寮人様、一生に一度の事でござります。とてもの事に、ものが逆になりませんよう、やっぱり美津から……」
 とちょっと目を合せた。
「女から、お盞を頂かして下さりまし。」
「そやかて、含
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