あった。
 ふと心付いた状《さま》して、動悸《どうき》を鎮めるげに、襟なる檜扇《ひおうぎ》の端をしっかと圧《おさ》えて、ト後《うしろ》を見て、襖《ふすま》にすらり靡《なび》いた、その下げ髪の丈を視《なが》めた。
 お珊の姿は陰々とした。

       二十三

 夫婦が二人、その若い顔を上げた時、お珊は何気なき面色《おももち》した。
「ほんになあ、くどいようなが多一さん、よう辛抱しやはった。中の芝居で、あの事がなかったら、幾ら私が無理云うたかて、丸官はんにこの祝言を承知さす事はようせんもの。……そりゃな、夫婦にはならはったかて、立行くように世帯が出来んとならんやないか。
 通い勤めなり、別に資本出すなりと、丸官はんに、応、言わせたも、皆、貴方《あんた》が、美津《みい》さんのために堪《こら》えなはった、心中立《しんじゅうだて》一つやな。十年七年の奉公を一度に済ましなはったも同じ事。
 額の疵《きず》は、その烏帽子に、金剛石《ダイヤモンド》を飾ったような光が映《さ》す……おお、天晴《あっぱれ》なお婿はん。
 さあ、お嫁はん、お酌しょうな。」
 と軽く云ったが、艶麗《あでやか》に、しかも威
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