のまま底に沈んだのである。
 奴《やっこ》はじりじりと後に退《すさ》った。
 お珊は汀《みぎわ》にすっくと立った。が、血が留って、俤《おもかげ》は瑪瑙《めのう》の白さを削ったのであった。
 この婦《おんな》が、一念懸けて、すると云うに、誰が何を妨げ得よう。
 日も待たず、その翌《あけ》の日の夕暮時、宝の市へ練出す前に、――丸官が昨夜《ゆうべ》芝居で振舞った、酒の上の暴虐《ぼうぎゃく》の負債《おいめ》を果させるため、とあって、――南新地の浪屋の奥二階。金屏風《きんびょうぶ》を引繞《ひきめぐ》らした、四海《しかい》波《なみ》静《しずか》に青畳の八畳で、お珊自分に、雌蝶雄蝶《めちょうおちょう》の長柄《ながえ》を取って、橘《たちばな》活《い》けた床の間の正面に、美少年の多一と、さて、名はお美津と云う、逢阪の辻、餅屋の娘を、二人並べて据えたのである。
 晴の装束は、お珊が金子《かね》に飽《あ》かして間に合わせた、宝の市の衣裳であった。
 まず上席のお美津を謂《い》おう。髪は結いたての水の垂るるような、十六七が潰《つぶ》し島田。前髪をふっくり取って、両端へはらりと分けた、遠山の眉にかかる柳の糸の振
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