引緊《ひきしま》った身の、拍手《かしわで》も堅く附着《くッつい》たのが、このところまで退出《まかんで》て、やっと掌《たなそこ》の開くを覚えながら、岸に、そのお珊の彳《たたず》んだのを見たのであった。
麩《ふ》でも投げたか、奴《やっこ》と二人で、同じ状《さま》に洋傘《こうもり》を傾けて、熟《じっ》と池の面《おも》を見入っている。
初阪は、不思議な物語に伝える類《たぐい》の、同じ百里の旅人である。天満の橋を渡る時、ふとどこともなく立顕《たちあらわ》れた、世にも凄《すご》いまで美しい婦《おんな》の手から、一通|玉章《たまずさ》を秘めた文箱《ふばこ》を託《ことずか》って来て、ここなる池で、かつて暗示された、別な美人《たおやめ》が受取りに出たような気がしてならぬ。
しかもそれは、途中|互《たがい》にもの言うにさえ、声の疲れた……激しい人の波を泳いで来た、殷賑《いんしん》、心斎橋《しんさいばし》、高麗橋《こうらいばし》と相並ぶ、天満の町筋を徹《とお》してであるにもかかわらず、説き難き一種|寂寞《せきばく》の感が身に迫った。参詣群集《さんけいぐんじゅ》、隙間のない、宮、社《やしろ》の、フトした
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