》に影を残して、鳥居際から衝《つ》と左へ切れた。
 が、目にも留まらぬばかり、掻消《かきけ》すがごとくに見えなくなった。
 高く競売屋《せりうりや》が居る、古いが、黒くがっしりした屋根|越《ごし》の其方《そなた》の空、一点の雲もなく、冴《さ》えた水色の隈《くま》なき中に、浅葱《あさぎ》や、樺《かば》や、朱や、青や、色づき初《そ》めた銀杏の梢《こずえ》に、風の戦《そよ》ぐ、と視《なが》めたのは、皆見世ものの立幟《たてのぼり》。
 太鼓に、鉦《かね》に、ひしひしと、打寄する跫音《あしおと》の、遠巻きめいて、遥《はるか》に淀川にも響くと聞きしは、誓文払いに出盛る人数《にんず》。お珊も暮るれば練るという、宝の市の夜《よ》をかけた、大阪中の賑《にぎわ》いである。

       十五

「御覧なさい、これが亀の池です。」
 と云う、男衆の目は、――ここに人を渡すために架《か》けたと云うより、築山《つきやま》の景色に刻んだような、天満宮《てんまんぐう》の境内を左へ入って、池を渡る橋の上で――池は視《み》ないで、向う岸へ外《そ》れた。
 階《きざはし》を昇って跪《ひざまず》いた時、言い知らぬ神霊に、
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