頓堀で、別に半鐘を打たなかったから、あれなり、ぐしゃぐしゃと消えたんだろう。
 その婦《おんな》だ、呆れたぐうたらだと思ったが、」
「もし、もし、」
 と男衆が、初阪の袖を、ぐい、と引いた。

       十四

 歩行《ある》くともなく話しながらも、男の足は早かった。と見ると、二人から十四五間、真直《まっすぐ》に見渡す。――狭いが、群集《ぐんじゅ》の夥《おびただ》しい町筋を、斜めに奴《やっこ》を連れて帰る――二個《ふたつ》、前後《あとさき》にすっと並んだ薄色の洋傘《こうもり》は、大輪の芙蓉《ふよう》の太陽《ひ》を浴びて、冷たく輝くがごとくに見えた。
 水打った地《つち》に、裳《もすそ》の綾《あや》の影も射《さ》す、色は四辺《あたり》を払ったのである。
「やあ、居る……」
 と、思わず初阪が声を立てる、ト両側を詰めた屋ごとの店、累《かさな》り合って露店もあり。軒にも、路にも、透間《すきま》のない人立《ひとだち》したが、いずれも言合せたように、その後姿を見送っていたらしいから、一見|赤毛布《あかげっと》のその風采《ふう》で、慌《あわただ》しく(居る、)と云えば、件《くだん》の婦《おんな
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