》に吃驚《びっくり》した事は、往来《ゆきき》の人の、近間なのには残らず分った。
 意気な案内者|大《おおい》に弱って、
「驚いては不可《いけ》ません。天満の青物市です。……それ、真正面《まっしょうめん》に、御鳥居を御覧なさい。」
 はじめて心付くと、先刻《さっき》視《なが》めた城に対して、稜威《みいず》は高し、宮居《みやい》の屋根。雲に連なる甍《いらか》の棟は、玉を刻んだ峰である。
 向って鳥居から町一筋、朝市の済んだあと、日蔽《ひおおい》の葭簀《よしず》を払った、両側の組柱は、鉄橋の木賃に似て、男も婦《おんな》も、折から市人《いちびと》の服装《なり》は皆黒いのに、一ツ鮮麗《あざやか》に行《ゆ》く美人の姿のために、さながら、市松障子の屋台した、菊の花壇のごとくに見えた。
「音に聞いた天満の市へ、突然《いきなり》入ったから驚いたんです。」
「そうでしょう。」
 擦違《すれちが》った人は、初阪《もの》の顔を見て皆|笑《わらい》を含む。
 両人《ふたり》は苦笑した。
「ほっこり、暖《あったか》い、暖い。」
 蒸芋《ふかしいも》の湯気の中に、紺の鯉口《こいぐち》した女房が、ぬっくりと立って呼ぶ
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