丸官、たかを聞いてさえぶるぶるする。これ、この通り震えるわい。)で、胴肩を一つに揺《ゆす》り上げて、(大胆ものめが、土性骨の太い奴《やち》や。主人のものだとたかを括《くく》って、大金を何の糟《かす》とも思いくさらん、乞食を忘れたか。)
 と言う。
 目に涙を一杯ためて、(御免下さいまし、)と、退《すさ》って廊下へ手を支《つ》くと、(あやまるに及ばん、よく、考えて、何と計らうべきか、そこへくい附いて分別して返答せい。……石になるまで、汝《わり》ゃ動くな。)とまた柿を引手繰《ひったく》って、かツかツと喰いかきながら、(止《や》めちまえ、馬鹿、)と舞台へ怒鳴る。
(旦那様、旦那様、)多一が震声《ふるえごえ》で呼んだと思え。
(早いな、汝《われ》がような下根《げこん》な奴には、三年かかろうと思うた分別が、立処《たちどころ》は偉い。俺《おれ》を呼ぶからには工夫が着いたな。まず、褒美《ほうび》を遣る。そりゃ頂け、)と柿の蔕《へた》を、色白な多一の頬へたたきつけた。
(もし、御寮人様、)と熟《じっ》と顔を見て、(どうしましたら宜《よろ》しいのでございましょう、)と縋《すが》るようにして言ったか言
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