、(端金子《はしたがね》、)で、底力を入れて塗《なす》りつけるように声を密《ひそ》めて……(な、端金子を、ああもこうもあるものかい。俺が払うな、と言うたかて払え。さっさと一束にして突付けろ。帰れ! 大白痴《おおたわけ》、その位な事が分らんか。)
 で、また追立《おった》てて、立掛ける、とまたしても、(待ちおれ。)だ。
(分ったか、何、分った、偉い! 出来《でか》す、)と云ってね、ふふん、と例の厭《いや》な笑方《わらいかた》をして、それ、直ぐに芸妓連《げいこれん》の顔をぎょろり。
(分ったら言うてみい、帰って何と返事をする、饒舌《しゃべ》れ。一応は聞いておく。丸官後学のために承りたい、ふん、)と鼻を仰向《あおむ》けに耳を多一に突附けて、そこにありあわせた、御寮人の黄金煙管《きんぎせる》を握って、立続けに、ふかふか吹かす。
(判然《はっきり》言え、判然、ちゃんと口上をもって吐《ぬ》かせ。うん、番頭に、番頭に、番頭に、何だ、金子《かね》を払え?……黙れ! 沙汰過ぎた青二才、)と可恐《おそろし》い顔になった。(誰が?)と吠《ほ》えるような声で、(誰が払えと言った。誰が、これ、五百円は大金だぞ!
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