4水準2−81−91]《みまわ》した、……私は書割の山の陰に潜《ひそ》んでいたろう。
 誰も居ないと見定めると、直ぐに、娘をわきへ推遣《おしや》って、手代が自分で、爺様《じいさん》の肩を敲《たた》き出した。
 二人はいい中で居るらしい、一目見て様子で知れる、」
「ほう、」
 と唐突《だしぬけ》に声を揚げて、男衆は小溝を一つ向うへ跳んだ。初阪は小さな石橋を渡った時。
「私は旅行《たび》をした効《かい》があると思った。
 声は届かないけれども、趣でよく分る。……両手を働かせながら、若手代は、顔で教えて、ここは可い、自分が介抱するから、あっちへ行って芝居を見るように、と勧めるんです。娘が肯《き》かないのを、優しく叱るらしく見えると、あいあいと頷《うなず》く風でね、老年《としより》を勦《いたわ》る男の深切を、嬉しそうに、二三度見返りながら、娘はいそいそと桟敷へ帰る。その竹の扉《ひらき》を出る時、ちょっと襟を合せましたよ。
 私も帰った。
 間もなく、何、さしたる事でもなかったろう。すぐに肩癖《けんぺき》は解《ほぐ》れた、と見えて、若い人は、隣の桟敷際へ戻って来て、廊下へ支膝《つきひざ》、以前《
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