》で、肩を敲《たた》こうとするが、ひッつるばかりで手が動かぬ。
 うん、と云う。
 や、老人《としより》の早打肩。危いと思った時、幕あきの鳴ものが、チャンと入って、下座《げざ》の三味線《さみせん》が、ト手首を口へ取って、湿《しめり》をくれたのが、ちらりと見える。
 どこか、もの蔭から、はらはらと走って出たのはその娘で。
 突然《いきなり》、爺様《じいさん》の背中へ掴《つか》まると、手水鉢の傍《わき》に、南天の実の撓々《たわたわ》と、霜に伏さった冷い緋鹿子《ひがのこ》、真白《まっしろ》な小腕《こがいな》で、どんつくの肩をたたくじゃないか。
 青苔《あおごけ》の緑青《ろくしょう》がぶくぶく禿《は》げた、湿った貼《のり》の香のぷんとする、山の書割の立て掛けてある暗い処へ凭懸《よっかか》って、ああ、さすがにここも都だ、としきりに可懐《なつかし》く熟《じっ》と視《み》た。
 そこへ、手水鉢へ来て、手を洗ったのが、若い手代――君が云う、その美少年の猿廻《さるまわし》。」

       十二

「急いで手拭を懐中《ふところ》へ突込むと、若手代はそこいらしきりに前後《あとさき》を※[#「目+句」、第
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