穿物なり、携帯品なり、金を懸《か》くれば際限あらず。以上に列記したるものを、はじめをはり取|揃《そろ》へむか、いくら安く積《つも》つて見ても……やつぱり少しも安からず、男子《おとこ》は裸百貫にて、女は着た処が、千両々々。
 羽織、半纏、或は前垂《まへだれ》、被布《ひふ》なんどいふものの此外になほ多けれどいづれも本式のものにあらず、別に項《かう》を分ちて以て礼服とともに詳記《しやうき》すべし。

     肌着《はだぎ》

 最も膚に親しき衣なり、数百金の盛装をなす者も多くは肌着に綿布を用ふ、別に袖もなし、裏はもとよりなり、要するにこれ一片の汗取《あせとり》に過ぎず。

     半襦袢《はんじゆばん》

 肌着の上に着《ちやく》す、地《ぢ》の色《いろ》、衣《きぬ》の類、好によりていろ/\あらむ。袖は友染か、縮緬か、いづれ胴とは異なるを用ふ、裏なき衣なり。

     長襦袢《ながじゆばん》

 半襦袢の上に着く、いはゆる蹴出しの全身なり。衣服の内、これを最も派手なるものとす、緋縮緬、友染等、やゝふけたる婦人にてもなほ密かにこの花やかなるを着けて思出とするなり。蓮歩《れんぽ》を移す裾捌《
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