に湯もじといふ、但し湯巻《ゆまき》と混《こん》ずべからず、湯巻は別に其ものあるなり。それより肌襦袢、その上に襦袢を着るもの、胴より上が襦袢にて腰から下が蹴出しになる、上下合はせて長襦袢なり、これに半襟の飾を着く、さて其上《そのうへ》に下着を着て胴着を着て合着を着て一番上が謂はずとも知れ切つて居る上着なり。帯の下に下〆《したじめ》と、なほ腰帯といふものあり。また帯上《おびあげ》と帯留とおまけに扱《しごき》といふものあり。細腰が纏《まと》ふもの数ふれば帯をはじめとして、下紐に至るまで凡そ七条とは驚くべく、これでも解けるから妙なものなり。
さて先づ帯を〆め果《は》つれば、足袋を穿く下駄を穿く。待て駒下駄を穿かぬ先に忘れたる物多くあり、即ち、紙入、手拭、銀貨入《ぎんくわいれ》、手提の革鞄、扇となり。まだ/\時計と指環もある。なくてはならざる匂袋、これを忘れてなるものか。頭巾《づきん》を冠《かぶ》つて肩掛を懸ける、雨の降る日は道行合羽《みちゆきがつぱ》、蛇《じや》の目の傘《からかさ》をさすなるべし。これにて礼服着用の立派な婦人|一人前《ひとりまへ》、粧飾品《さうしよくひん》なり、衣服なり、はた
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