つるのひとつくるところのきぬなり》白絹也《しろききぬなり》と侍中群要《ぢちうぐんえう》に見えたりとか。貞丈雑記《ていぢやうざつき》に、湯を召さするに常の衣《きぬ》の上に白き生絹《きぎぬ》、其《その》白《しろ》き生絹の衣《い》を、湯巻ともいまきともいふなり。こは湯の滴《したたり》の飛びて衣を濡すを防ぐべきための衣なり、とあり。俗に婦人の腰に纏ふ処の
湯具《ゆぐ》
といふものを湯巻といふは違へりとぞ。今の湯具は古《いにしへ》の下裳《したも》に代用したる下部《かぶ》を蔽《おほ》ふの衣《い》なり。嬉遊笑覧《きいうせうらん》に、湯具《ゆぐ》といふは、男女《なんによ》ともに前陰《ぜんいん》を顕して湯に入ることはもとなき事にて必ず下帯をきかえて湯に入るゆゑ湯具といふ。古の女は、下賤なるも袴《はかま》着《き》たれば、下裳《したも》さへなく唯肌着を紐にて結びたり。これをこそ下帯とはいふなりけれ。伊勢物語に、「二人して結びし紐を一人して相見るまでは解かじとぞ思ふ」思ふに下裳《したも》は小児《せうに》の附紐の如く肌着に着けたる紐なるべし。或は今下じめといふものの如く結びたるものならむか。応永
前へ
次へ
全13ページ中11ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡花 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング