、博士、俳優、いずれの道にも、知名の人物が少くない。揃った事は、婦人科、小児科、歯科もある。申しおくれました、作家、劇作家も勿論ある。そこで、この面々が、年齢の老若にかかわらず、東京ばかりではない。のみならず、ことさらに、江戸がるのを毛嫌いして「そうです。」「のむです。」を行《や》る名士が少くない。純情|無垢《むく》な素質であるほど、ついその訛《なまり》がお誓にうつる。
浅草寺の天井の絵の天人が、蓮華の盥《たらい》で、肌脱ぎの化粧をしながら、「こウ雲助どう、こんたア、きょう下界へでさっしゃるなら、京橋の仙女香を、とって来ておくんなんし、これサ乙女や、なによウふざけるのだ、きりきりきょうでえをだしておかねえか。」(○註に、けわい坂《ざか》――実は吉原――近所だけか、おかしなことばが、うつッていたまう、)と洒落《しゃ》れつつ敬意を表した、著作の実例がある。遺憾《いかん》ながら「嬉しいですわ。」とはかいてない。けれども、その趣はわかると思う。またそれよりも、真珠の首飾見たようなものを、ちょっと、脇の下へずらして、乳首をかくした膚《はだ》を、お望みの方は、文政|壬辰《みずのえたつ》新板、柳亭
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