ると、その挙動は同一《おんなじ》らしい。……白鷺が再び、すっと進む。
 あの歩《あし》の運びは、小股《こまた》がきれて、意気に見える。斑※[#「(矛+攵)/虫」、第4水準2−87−65]は、また飛びしさった。白鷺が道の中を。……
 ――きみ、――きみ――
「うっかり声を出して呼んだんだよ、つい。……毒虫だ、大毒だ。きみ、哺《くわ》えてはいけないと。あの毒は大変です、その卵のくッついた野菜を食べると、血を吐いて即死だそうだ。
 現に、私がね、ただ、触られてかぶれたばかりだが。
 北国《ほっこく》の秋の祭――十月です。半ば頃、その祭に呼ばれて親類へ行った。
 白山宮《はくさんぐう》の境内、大きな手水鉢《ちょうずばち》のわきで、人ごみの中だったが、山の方から、颯《さっ》と虫が来て頬へとまった。指のさきで払い落したあとが、むずむずと痒《かゆ》いんだね。
 御手洗《みたらし》は清くて冷い、すぐ洗えばだったけれども、神様の助けです。手も清め、口もそそぐ。……あの手をいきなり突込《つっこ》んだらどのくらい人を損《そこな》ったろう。――たとい殺さないまでもと思うと、今でも身の毛が立つほどだ。ほてって、
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