掛けている。且つこれは、乗込もうとする車の外で、ほかの少年の手から受取って持替えたものであった。そうして、栗鼠《りす》が(註、この篇の談者、小県凡杯は、兎のように、と云ったのであるが、兎は私が贔屓《ひいき》だから、栗鼠にしておく。)後脚《あとあし》で飛ぶごとく、嬉しそうに、刎《は》ねつつ飛込んで、腰を掛けても、その、ぴょん、が留《や》まないではずんでいた。
――後に、四童、一老が、自動車を辞し去った時は、ずんぐりとして、それは熊のように、色の真黒《まっくろ》な子供が、手がわりに銃を受取ると斉《ひと》しく、むくむく、もこもこと、踊躍《ようやく》して降りたのを思うと、一具の銃は、一行の名誉と、衿飾《きんしょく》の、旗表《はたじるし》であったらしい。
猟期は過ぎている。まさか、子供を使って、洋刀《ナイフ》や空気銃の宣伝をするのではあるまい。
いずれ仔細《しさい》があるであろう。
ロイドめがねの黒い柄を、耳の尖《さき》に、?のように、振向いて運転手が、
「どちらですか。」
「ええ処で降りるんじゃ。」
と威圧するごとくに答えながら、双手を挙げて子供等を制した。栗鼠ばかりでない。あと三個
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