小宮山がその形で突立《つッた》ったまま、口も利けないのに、女は好《すき》な事をほざいたのでありまする。
それから女は身に纏《まと》った、その一重《ひとえ》の衣《きもの》を脱ぎ捨てまして、一糸も掛けざる裸体になりました。小宮山は負惜《まけおしみ》、此奴《こいつ》温泉場の化物だけに裸体だなと思っておりまする。女はまた一つの青い色の罎《びん》を取出しましたから、これから怨念が顕《あらわ》れるのだと恐《おそれ》を懐《いだ》くと、かねて聞いたとは様子が違い、これは掌《てのひら》へ三滴《みたらし》ばかり仙女香《せんじょこう》を使う塩梅《あんばい》に、両の掌《てのひら》でぴたぴたと揉《も》んで、肩から腕へ塗り附け、胸から腹へ塗り下げ、襟耳の裏、やがては太股《ふともも》、脹脛《ふくらはぎ》、足の爪先まで、隈《くま》なく塗り廻しますると、真直《まっすぐ》に立上りましたのでありまする。
小宮山は肚《はら》の内で、
「東西。」
女はそう致して、的面《まとも》に台に向いまして、ちちんぷいぷい、御代《ごよ》の御宝《おんたから》と言ったのだか何だか解りませぬが、口に怪しい呪文を唱えて、ばさりばさりと双《ふた
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