また雨戸を開けて、縁側から庭へ寝衣《ねまき》姿、跣足《はだし》のままで飛下りる。
 戸外《おもて》は真昼のような良い月夜、虫の飛び交うさえ見えるくらい、生茂《おいしげ》った草が一筋に靡《なび》いて、白玉の露の散る中を、一文字に駈けて行くお雪の姿、早や小さくなって見えまする。
 小宮山は蝙蝠のごとく手を拡げて、遠くから組んでも留めんず勢《いきおい》。
「おうい、おうい、お雪さん、お雪さん、お雪さん。」
 と声を限り、これや串戯《じょうだん》をしては可《い》けないぜと、思わず独言《ひとりごと》を言いながら、露草を踏《ふみ》しだき、薄《すすき》を掻分《かきわ》け、刈萱《かるかや》を押遣って、章駄天《いだてん》のように追駈けまする、姿は草の中に見え隠れて、あたかもこれ月夜に兎の踊るよう。
「お雪さん、おうい、お雪さん。」
 間《あわい》もやや近くなり、声も届きましたか、お雪はふと歩《あゆみ》を停《とど》めて、後を振返ると両の手を合せました。助けてくれと云うのであろう、哀れさも、不便《ふびん》さもかばかりなるは、と駈け着ける中《うち》、操《あやつり》の糸に掛けられたよう、お雪は、左へ右へ蹌踉《よ
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